蜜は甘いとは限らない。【完】
そう言って停めてあるBMWのドアを、紳士ぶったこの男がエスコートしながら開ける。
それにすんなり乗るあたしはちょっと前に拒否することをやめた。
...どうせ乗ることになるんだもの。
バタン、
「......はぁ、疲れた。
お前さ、車に乗ってから話せよ。面倒くさい」
車に乗り込みドアを閉めた途端、口を開いたのはさっきまで丁寧に話していた男。
...可笑しいと思うかもしれないけれど、これがこの男の本性。
「...なんでいちいち本性隠すのよ」
「あ?うるせぇよ。妬いてんのか?」
うるさいのはあんただし、妬いたことなんて一度たりともない。
「ま、俺に従っときゃいんだよ。
お前俺のこと好きだろ?」
この男は馬鹿なのか。
「はぁ?
あたしがいつ、そんなこと言った?」
もう一度言おう、この男は馬鹿なのか。