蜜は甘いとは限らない。【完】
「あ、こんにちは。姐さん」
「...こんにちは。剣くん」
入って直ぐに寺島と別れたあたしは、箒を持った怖面の男の子に頭を下げられる。
...うん、男の“子”だったはず。
前に高校生と聞いたから。
言わないけど、そうは見えないのが本音だ。
ただ、笑った顔だけは歳相応の子供の笑顔で、可愛い。
他にも廊下を歩いているあたしに頭を下げてくれる人は居て、そんな人たちに自分も頭を下げながら奥の部屋へ進む。
バンッ
そして一番奥の部屋に着いたあたしは目的の部屋のドアを開ける。
...はぁ、またか。
「あ、姉貴。お帰りー」
「...お帰りじゃないでしょう?葵」
ドアを開けた先には我が弟。
瀬崎葵(せざきあおい)。高校2年。
あたしと同じ薄茶の髪と目。
そんな弟がいるこの部屋は...
赤、朱、アカ。
赤で染まっている。
「...また喧嘩?
いい加減にしなさいよ」