蜜は甘いとは限らない。【完】
「寺島、あんたいい加減にしてよ?
あたしは手当てしてたの、退いて」
ゆっくり立ち上がったあたしの前に立ち塞がる馬鹿は、退かない。
あぁ、腹が立って仕方がない。
「...それ以上、退かないでそこに居るつもりなのなら、バラすわよ」
「あ”?」
「はぁ...。
“急にごめん。僕はずっと前から明日香さ...”」
「待て、ストップ、」
言ってもガンを飛ばしてくるだけで退かないこの男は理解力が無いのだろうか。
や、きっとないのだろう。
退くのでなく、逆に前から掴みかかってくる寺島を避けながら続きを言う。
「“明日香さんのことが...”」
「止めろっ!」
なんか楽しくなってきた。
ニヤリ、緩んでしまう口元をバレないように隠す。
...そもそも、こんなに寺島が焦ってあたしを止めるのは、以前あたしが掃除をしている時に見つけてしまった手紙が原因だ。