蜜は甘いとは限らない。【完】



「…会議室に、行けばいいの?」

「会議は、そこで行われます」

「分かった」




あたしが降りれば直ぐに山中があたしの前に来て、エスコートをする。


別に、そんなことされなくともあたしは行けるわよ。今更逃げも隠れもしないし。



そのまま社内に入れば、さすがにあたしの顔を知らない人は居ないのか、ヘコヘコと頭を下げる人が道の先々でいた。



…自分より歳が下のあたしに対してそんなに頭を下げて、プライドっていうものはないのかしら。


まだ社長になるとも決まっていない、社長の娘という肩書きしか持っていないあたしに頭を下げる必要は無いのだから。




「こちらです」

「…上に書いてあるんだから分かるわよ」




初めは周りと同じように頭を下げ返していたあたしだけど、人数の多さに諦めて真っ直ぐ歩いて行けば馬鹿でかいドアがあった。


上にあるプレートには《会議室》と書かれていた。



コンコンっ




「失礼します」





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