蜜は甘いとは限らない。【完】



「…遅い」

「すいません」




ゆっくり入っていった会議室の中の一番大きな椅子に座っていたのは、嵐川さんだった。

遅いって言ったって、まだ始まってもいないし人だって集まっていない。




「今日、あたしを呼んだのはなぜです?
紙に目を通した限り、あたしは関係ありませんよね?」

「関係がなくとも、お前は跡継ぎだろう?
ならここに居たとしても何も言われない」

「(そういうこと、聞いてるわけじゃないんだけど)」




これ以上は口を開いてくれそうにもない嵐川さんにバレないように溜め息をつき、他の人を待つ。

この時はまだ、あの資料の中にあった葵に貰った一枚の紙の理由が分かっていなかった。




「それでは、○○○についての開発会議を行う」




暫くすれば会議室にある分の椅子がおじ様やおば様方で埋め尽くされた。

今日の話は、売上が下がってきている店の話かららしい。




「最近、売上が伸びるどころか下がってるな。
どうするつもりだ?」





< 213 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop