蜜は甘いとは限らない。【完】
そんなの、初めて聞いたんだけど。
「…当たり前、俺が言うなって周りに口止めしてたから」
「そう、なの?」
「そうです。
そのときのぼっちゃ、…葵様の顔はすごかったですよ。
まるで般若のようでした」
「余計なこと言うな、山中。
てか坊っちゃんって言うな」
ムスッと頬を膨らまして口を尖らせる葵。
そんなところも、まだまだ子供だ。
「そういえば、珍しく大人しくあたしに直接会って何も言わなかったのは、寺島にでも怒られたから?」
「………なんで分かるの」
「あ、やっぱり?
どうせナメて掛かったんでしょ」
「だって、あいつ馬鹿だろ」
馬鹿はアンタも同じ。
「馬鹿でも、一応アレ、若って慕われてるんだから強いに決まってるでしょ。
それに、昔族のトップ張ってたし」
つまり、葵と寺島では格が違うってこと。
「…なんで姉貴がそんなこと知ってんだよ」
「まぁ、あたしも昔はヤンチャしてたのよー」
「そうですね、お嬢様の後片付けは、私達が任されていましたから」
葵様より、酷かったですね。
あ、ちょ、葵に余計なこと言わないでよ。