蜜は甘いとは限らない。【完】




そんなの、初めて聞いたんだけど。





「…当たり前、俺が言うなって周りに口止めしてたから」

「そう、なの?」

「そうです。
そのときのぼっちゃ、…葵様の顔はすごかったですよ。
まるで般若のようでした」

「余計なこと言うな、山中。
てか坊っちゃんって言うな」




ムスッと頬を膨らまして口を尖らせる葵。

そんなところも、まだまだ子供だ。




「そういえば、珍しく大人しくあたしに直接会って何も言わなかったのは、寺島にでも怒られたから?」

「………なんで分かるの」

「あ、やっぱり?
どうせナメて掛かったんでしょ」

「だって、あいつ馬鹿だろ」




馬鹿はアンタも同じ。




「馬鹿でも、一応アレ、若って慕われてるんだから強いに決まってるでしょ。
それに、昔族のトップ張ってたし」




つまり、葵と寺島では格が違うってこと。




「…なんで姉貴がそんなこと知ってんだよ」

「まぁ、あたしも昔はヤンチャしてたのよー」

「そうですね、お嬢様の後片付けは、私達が任されていましたから」




葵様より、酷かったですね。


あ、ちょ、葵に余計なこと言わないでよ。




< 225 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop