蜜は甘いとは限らない。【完】
て、そうじゃなくて。
「寒いからとりあえず何処か店に入ろう?」
「誰のせいで待ってたと思ってる??」
「…あたし、かな?」
「はぁ、あほ」
「いた、」
あほ、と言いながらあたしがいつも葵にするようにチョップを落とされた。
痛くないけど、痛いと言ってしまった。
そんなあたしを見て、寺島が笑う。
「ね、どこでもいいでしょ?」
「あ?
別にいいけど、和食な」
「………こんな時間じゃ、居酒屋くらいしか浮かばないんだけど」
「そのつもりだしな」
なによそれ、聞いた意味ないし。
それにあたしはずっとレストランのつもりでいたんだけれど。
結局寺島の行きたいらしい居酒屋へ寺島を先頭について行った。
ていうか、腕を引っ張られてるせいであたしは後ろをついて行くようにしか動けなかったんだけど。
「よう、ジジィ」
「お、拓坊じゃねぇか。
久しぶりだな」
「おぅ。
久しぶりに飲みに来てやった」
「とか言いながら寂しかっただけだろ?」
…誰だ、この毛むくじゃら人間(?)は。