蜜は甘いとは限らない。【完】
慣れたように入った少しボロい居酒屋には、知り合いらしいおじいさんがいた。
見た感じは60後半なのに、力強い声は年齢を感じさせない。
「そういうお前が、寂しかったんじゃねぇのか?
あんだけヘタれてここに来てたんだから」
「ヘタれてねぇし」
お、おぉ。
隆哉さん意外でここまで寺島に言う人、初めて見る。
「馬鹿か。
……てか、後ろの女はお前のこれか?」
「違ぇ(違います)!!」
ピンと立てられた小指に2人揃って叫ぶ。
…なんでそういう風に見えるんだろ…。
まぁ、そう言われたのは隆哉さんと合わせて2人目だけど。
「なんだ、まだ告ってねぇのか?
ちまっこい男だなぁ、拓坊」
「うっせ。告ったけどまだ返事もらってねぇだけだ」
「はっ、振られたか??」
「だから、まだ返事貰ってねぇんだって言ってるだろ!!」
こういうのはさ、本人が居ないところでして欲しいのだけど。
すっごく、恥ずかしいから。
「はははっ、意地になんなって。
ま、座れや」
「…誰が座らせてくれなかったんだよ」