蜜は甘いとは限らない。【完】
うん、今のはちょっと寺島の言葉に賛成かもしれない。
入ってすぐに立ち話を始めたのは向こうだったはずだから。
「とりあえず酒だろ、酒。
そこの嬢ちゃんも、日本酒とかイケる口だろ」
「...や、えと、まぁ」
「ほら、いいからさっさと奥に戻って飯の用意しろよ」
「うるせぇ男はモテねぇぞ」
...あたしは一体どんな風に見えているんだろ。
日本酒なんて、あたし飲んだことないんだけどな。
奥に戻っていく最後の最後まで口元を緩めてからかったおじいさんに、寺島が苛立ちながら文句を言うけどその横顔は心無しか少し、楽しそうに見えた。
「...あれは昔からなんだかんだお世話になってるジジイ。
横山迅って名前だけど、別に呼び方はジジイでもいいぞ」
「...ふーん...。寺島はあの人のこと、好きなのね」
「は?!どこをどう見てその考えに陥った?!」
「え、そんな寺島を見てたんだけど」
「見てねぇだろ。
...まぁ嫌いではないけどな。
なんていうか、俺はあんなジジイだけど尊敬してる」
「そう、なの」