蜜は甘いとは限らない。【完】
モノを懐かしむかのように無邪気に笑ってあたしにあのおじいさんを紹介する。
...紹介してくれるのはすごく嬉しいのだけど、少し胸の辺りがムカムカする。
久しぶりに見れた笑顔を見て、なぜかそう思った。
そんなことを考えているとは思っていないだろう寺島は、曖昧な返事をしたあたしのことを気にもせず座ってあたしを見て首を傾げている。
いちいち気にしてもいられないだろうけど。
1つ溜め息をついてカウンター席に座った寺島の隣にあたしも座る。
「ほれ、今日は特別にいいやつ出してやる。
まぁ、値引きなんてしてやらねぇけど」
「そこはしろよ」
「なんでお前にしなきゃいけねぇんだ」
「はぁ?!」
寂しがりのジジイに久しぶりに顔見せてやっただろうが!
コトンとグラスと共に出された日本酒のことを知らないあたしでも知っている日本酒“黒龍”。
値段までは知らないけど、きっと高いのだろう。
でも組ってお金沢山入ってくるんでしょ?
なら寺島ならポンとだせる値段でしょ。
あんたいくら持ってるのよ。
「んなことは金とは別だ、馬鹿。
とりあえず飲め」
「あ゛?おま「いただきます」おい、舞弥?!」
「おお、飲め飲め!ちょっと女にはキツイかもだけどな!」
「ぐ、っ...ゲホゲホっっ」