演劇部の記憶
「今から戻ったって時間がありませんよ」
 弘が悪いのか、マスターが悪いのか、はたまた誰も悪くないのか、わたしはまだわからなかった。だから、練習をやるのかやらないのか、時間のせいにしてあやふやな返事をした。
「あなたがやるつもりなら、今からでも間に合うよ」
 そして、わたしはマスターに連れられて玄関から外に出た。家の前の公園では、薄暗い街灯の下、弘と他のみんなが練習に励んでいた。
「よし。もう一回、最初からやるぞ」
 わたしは、みんなに向かってそう言った。
「はい」
 一年生三人が、突然来たわたしに戸惑いながらもそう返事をした。それにつられて弘も「はい」とうなづいた。
 その様子を見てマスターも車に乗り込んで、エンジンをかけた。

********

その日の練習は、日付が変わる直前まで続いた。途中で、わたしの親が、今日弘がホテルの部屋に持ってきてくれたのと同じように夜食に月見うどんを持ってきてくれた。

********

< 13 / 29 >

この作品をシェア

pagetop