演劇部の記憶
―なぜ、今回、農政事務所に相談に行こうと思ったのですか。
「昨年も農政事務所に相談の手紙を出したのですが、ご返答をいただけなかったのです。それで、今回は、偽装の実態をわかってもらいたく、一人で行っても無視されるのではないかと思い、佐藤(記者)さんと相談して行くことにしたんです」
―いつから偽装をしていたのですか。
「去年の四月に代表が変わったのです。それからすぐ、新代表から食肉の産地を偽装するようにという指示がありました。何度も私は、代表におかしいと言ってきたのですが、農政事務所に相談しても聞いてもらえず、偽装する生活に嫌気がさし退職をしたという次第です」
―新代表は何と言って偽装を指示したのですか。
「うちのNPO法人は、障害者に勤労の場を提供しようという趣旨で作ったものなので、従業員の8割は知的障害者なのです。そこで、産地表示シールを国産と準備しておけば知的障害者は何も考えず今まで通りやり続けるからそうしなさいという指示でした」
―そういう仕事がいやになり、退職したと。
「はい」
―あえて退職してから、今回再度、農政事務所に行こうとした理由は?
「まだ、NPOの内部にいる職員が偽装に手をいやいや貸しているんだと思うと非常に悔しくて。そこで、責任ある地位にいた私がこの問題にしっかり蹴りをつけないといけないと思いました」

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