演劇部の記憶
「久しぶりです」
「ああ。今、忙しいから封筒出したら、帰ってほしいんだけど」
弘の言葉にわたしは身を固くしてそう答えた。
「ああ、封筒。先輩のお父さんから預かってきました」
その「お父さん」という言葉にわたしはさらに身を固くした。
「ああ、ありがと」
わたしはそう言うと、玄関から弘を追い出して鍵をしめた。手紙の中身、手紙を読んでいるわたしは弘には知られてはいけないもののような気がした。
しかし、弘を外に追い出すと、わたしの中から封筒を読むという気持ちも消えていた。テーブルの上に封筒を置き、わたしはベッドの上に寝っ転がった。
しかし、わたしに何かをする予定もない。夏休み中だから授業に行く必要もないし、部活動に行く気もおきない。そのような日々が淡々と続いていった。頭では、メディアはこの食肉偽装をわすれもう次の話題になっているだろうだろうと思うが、わたしの心の中の何かがわたし自身が部屋の外に出ることを歯止めしていた。
弘が家を訪ねてからだいたい1か月がたった。その間、わたしは夜に近くのコンビニに最低限の買い物に行くことはあったが、それ以外の交友関係は絶っていた。まだ、誰かに親のことを聞かれるのが怖かった。そのうちに時期は秋となり、大学の後期の授業が始まった日の夜、また弘が訪ねてきた。わたしは、体調がすぐれず、大学に行かずに家にいた。
「あれ? 高校は?」
「もう高校の卒業単位全部とっちゃったんで、実家に帰ってしばらくお休み」
「ああ。今、忙しいから封筒出したら、帰ってほしいんだけど」
弘の言葉にわたしは身を固くしてそう答えた。
「ああ、封筒。先輩のお父さんから預かってきました」
その「お父さん」という言葉にわたしはさらに身を固くした。
「ああ、ありがと」
わたしはそう言うと、玄関から弘を追い出して鍵をしめた。手紙の中身、手紙を読んでいるわたしは弘には知られてはいけないもののような気がした。
しかし、弘を外に追い出すと、わたしの中から封筒を読むという気持ちも消えていた。テーブルの上に封筒を置き、わたしはベッドの上に寝っ転がった。
しかし、わたしに何かをする予定もない。夏休み中だから授業に行く必要もないし、部活動に行く気もおきない。そのような日々が淡々と続いていった。頭では、メディアはこの食肉偽装をわすれもう次の話題になっているだろうだろうと思うが、わたしの心の中の何かがわたし自身が部屋の外に出ることを歯止めしていた。
弘が家を訪ねてからだいたい1か月がたった。その間、わたしは夜に近くのコンビニに最低限の買い物に行くことはあったが、それ以外の交友関係は絶っていた。まだ、誰かに親のことを聞かれるのが怖かった。そのうちに時期は秋となり、大学の後期の授業が始まった日の夜、また弘が訪ねてきた。わたしは、体調がすぐれず、大学に行かずに家にいた。
「あれ? 高校は?」
「もう高校の卒業単位全部とっちゃったんで、実家に帰ってしばらくお休み」