演劇部の記憶

その職員の人はこう言うんだ。「私も偽装は嫌です。しかし、工場長もやめて、私もやめたら、何もわからず偽装に手を貸している残された障害者の人たちはどうなるんでしょうか」そう言われた時、父さん言葉がなかったね。偽装はいけないことだと父さんは辞めたけど、残された人たちのことを何も考えていなかったなと。

　それで父さん、もう一度、その偽装問題をどうにかしないといけないと思った。その職員の人が告発をするということも考えたけど、そうしたら、ハートフル畜産の中で干されてしまう。そうしたら、偽装問題が発覚したハートフル畜産を立て直す人材を失いかねない。その点、父さんが告発すれば、残された職員でハートフル畜産が立て直せる。

　それで、父さんが告発した。だけど、お前を傷つけた。結局父さんは偽善だったというわけだな。正直、こんなに問題が拡大するとは思わなかった。だけど、こうするしかなかったということをわかってほしい。２０年前、父さんと先代の代表で、障害者の雇用の場をということで作り上げたハートフル畜産をここでつぶすわけにはいかなかった。先代に顔向けもできない。そのためにも、ハートフルに残った偽装はだめだという職員を傷つけることはできなかった。
　
　しかしだ、聞くところによると、ハートフル畜産はもうだめかもしれない。もう信用をなくしてしまった。父さんは、障害者を守ろうというはずが、いつの間にか、ハートフル畜産を守るになってしまっていたんだと思う。障害者を守るんだったら、父さん１人、そこを辞めたらいけなかったんだ。それで、結局ハートフル畜産も守れなかった。

　なんか書いてあること意味がわからないな。父さんもうだめだ。だけど、これだけはわかってほしい。告発したことは悪いことではない。だからお前が恥ずかしがることはない。本当は直接会って言いたかったけど、こんな形になって本当に申し訳なく思う』