演劇部の記憶
わたしは、手紙をたたみ封筒の中に戻した。わたしの頭の中は何かもやもやとした感じだけが残っていた。お父さんが告発する以外の道もあったんだ、父さんが告発することはなかった……。お父さんが告発しなければわたしはこうならなかった。
「どうします?」横から弘が声をかけた。
「どうしますって言うと?」
「先週お父さんのハートフル畜産はつぶれました。一度、大阪に戻りませんか。お父さんも待っていると思います」
「いや、明日から授業にもでたいし」
「それなら、明日は僕一緒に大学行きましょうね」
その日の翌朝、約束どおり弘と大学まで行った。しかし、門の辺りで同じ大学の人とすれ違うと誰もがわたしのことをうわさしているように感じた。
「やっぱり、具合悪いから帰るわ」
わたしはそう言うと、横に歩いていた弘を振りきり、今来た道を家へと戻った。
「先輩、しっかりしてくださいよ」
弘のその言葉を背にして私は家に戻った。
家に帰ってから、わたしは思った。弘と次に会えるのはいつだろうか。弘は演劇を無事見られているのだろうか。わたしを探していないだろうか。
他の人には会いたくないという気持ちはまだまだ強かったが、こと弘に対しては、あいさつもせず別れてしまい、次会えるのがいつかわからないという状況がさびしく感じた。
次に弘が家に来たのは年末だった。
「この前はごめんね。でも、どうしてこんなにわたしのところに来てくれるの」
玄関に入ってきた弘にわたしはそう切り出した。
「僕がやってもらったことを返しているだけですよ」
わたしの質問に弘は一瞬びっくりしたようだがそう答えた。弘は続けた。
「どうします?」横から弘が声をかけた。
「どうしますって言うと?」
「先週お父さんのハートフル畜産はつぶれました。一度、大阪に戻りませんか。お父さんも待っていると思います」
「いや、明日から授業にもでたいし」
「それなら、明日は僕一緒に大学行きましょうね」
その日の翌朝、約束どおり弘と大学まで行った。しかし、門の辺りで同じ大学の人とすれ違うと誰もがわたしのことをうわさしているように感じた。
「やっぱり、具合悪いから帰るわ」
わたしはそう言うと、横に歩いていた弘を振りきり、今来た道を家へと戻った。
「先輩、しっかりしてくださいよ」
弘のその言葉を背にして私は家に戻った。
家に帰ってから、わたしは思った。弘と次に会えるのはいつだろうか。弘は演劇を無事見られているのだろうか。わたしを探していないだろうか。
他の人には会いたくないという気持ちはまだまだ強かったが、こと弘に対しては、あいさつもせず別れてしまい、次会えるのがいつかわからないという状況がさびしく感じた。
次に弘が家に来たのは年末だった。
「この前はごめんね。でも、どうしてこんなにわたしのところに来てくれるの」
玄関に入ってきた弘にわたしはそう切り出した。
「僕がやってもらったことを返しているだけですよ」
わたしの質問に弘は一瞬びっくりしたようだがそう答えた。弘は続けた。