★短編集★
第二話◎謝罪と奢り

俺達に謝った後、
キャミソール姿の葛山に
上着を着せ、左頬を
ビンタした野々上先生。

「先生、何も
叩かなくてよかったのに」

いい音したから
かなり痛いだろうなぁ……

葛山を庇う気は
さらさらないが
あいつも一応女だかな
腫れたりしたら嫌だろ。

「これくらいが
ちょうどいいんだよ」

そう言って、
俺達の方に戻って来た。

「奢るから飯行こうぜ」

この部室の状態は……

まぁいいか。

今、俺達は野々上先生の
車の中に居る。

まぁいいかと
思ったものの
やっぱり、気掛かりだ。

「先生、
あの状況で出て来て
よかったんですか?」

そうやって聴くと
しれっと
答えが返って来た。

「芳乃に
やらせりゃいいんだよ」

運転しながら
振り返りもせずに言った。

まぁ、あの状況を
作り出したのは葛山だし
周りに人も大勢いたから
どうにかなるだろうけど
やっぱり、釈然としない。

「着いたぞ」

俺が一人
物思いに耽ってる間に
目的地に着いたみたいだ。

野々上先生が
車を停めた場所は
回転寿司だった。

幟には【マグロフェア】と
書いてあった。

回転寿司なんて
久しぶりだなと
春也が言った。

俺も久しぶりだな。

最後に来たのは
一年前に家族で
来たっきりだ。

「ほら降りた降りた」

急かされながら
車を降りた。

「好きな物食えよ」

テーブル席に座って
野々上先生が言った。

「俺、沢山食いますよ?」

見た目に反して
俺はよく食う方だ。

「大丈夫だ
気にせず食え食え」

やったー

男三人で来る回転寿司。

客は思いの外
あまり居なかった。

魚好きの俺にとって
回転寿司は楽園だ。

『奏音、
目がキラキラしてるぞ』

ぅ゛っ、
顔に出てたらしい。

「俺が魚好きなの
知ってるだろう?」

此処は、開き直る。

「へぇ~
楠木は魚好きなのかぁ」

テーブル席に案内され、
俺と春也が隣同士で
野々上先生が
向かいに座った。
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