イジワル上司に恋をして

それから、10分程度でわたしは香耶さんに言われた通りにすぐに上がった。

一人きりのエレベーターの中で、携帯電話を取り出した。
未読のメールが1件。それは、さっき営業中に届いてたもの。

メールボックスを開くと同時に、いつの間にか目的階に到着していて慌てて降りた。
廊下を歩きながらだと落ち着かなくて、ロッカー室に入ってから、と先を急ぐ。

そして、ロッカー室に入ったときに、改めて携帯と向き合った。

【西嶋さん】。ディスプレイにはそう出ていた。
それは、最初に確認したときにわかってた。だから、逆に仕事が終わる今まで確認できなかった。

どんな内容かな……。やっぱり、この間の話について……とか?

見たいような見たくないような。
本当に例え難い、何とも言えない心境で、しばらくわたしはそのまま携帯と睨めっこをしていた。

けれど、いつまでのそうしてなんかいられないから。
思い切って、そのメールを開いてみた。


【おつかれさま。今日、先輩と昼一緒したんだけど。そのときに、最初になの花ちゃんに連れて行ってもらった居酒屋を通りかかったんだ。あそこ、ランチもやってるんだね。今度先輩と行ってみようかと思ったよ。あ、先輩となら、奢ってもらえるからね(笑)】


……普通のメール、だ。

「ほぅ」っと息を吐いて、無意識に強張っていた肩の力が抜けていく。ロッカーに背中を預けながら、その文面をもう一度読み直した。


……あれ?! これ……わたしの名前が……〝なの花ちゃん〟になってる……!
西嶋さんは、わたしのこと「鈴原さん」としか呼んでなかったのに。なんか……嫌なわけじゃないけど、恥ずかしい……。

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