イジワル上司に恋をして

この男……わたしの心、いつから見抜いて……。
確かに、お茶を出すとこから始まって、発注や披露宴を目の当たりにしたり……。徐々にブライダルの仕事について興味を持っていった。
大変そうだけど、やりがいのありそうな仕事だなぁって。

でも、まさかそれに気付かれてたなんて!


「どうする? 今、決めろ」


片眉を吊り上げて、ニッと笑いながら言うヤツは、絶対わたしを試して遊んでる。
……だって、コイツはわたしの答えを知ってて「今」だなんて即決させようとしてるんだから。


「やります」
「当然だな。ああ、とりあえずオレの担当の一件の客が、近々一から打ち合わせ始まるから、それに付き合え」
「えっ」


よ、よりによって、コイツの担当か……。香耶さんとかのがよかったのに……。


「その、心情が顔に出るとこはどうにかしろよ。ほら、そのスケジュールだ」


渋々手を伸ばし、受け取った用紙に視線を落とすと、勢いよく顔を上げた。


「……〝客〟の熱い要望だ。『なの花ちゃんにも手伝ってほしい』ってな」


その用紙の左上に記載されていたのは、【黒川・安藤ご両家 様】となってた。
そう。そのお客さんっていうのは、修哉さんのことだったんだ。


「そういうことだ。話はそれだけ」
「もしかして、さっきの『スムーズに進めるために数字をもう少し伸ばしたい』っていうのは……」
「……売上が追いついてないのに、人員を増やすって言うのは難題なんだよ。まぁ幸い、オレが来てから数字は右肩上がりだけどな」


なんて自信過剰なヤツなんだ。
……いや、でも、あながち間違ってもないんだろうけど。

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