夏音の風

高校生達が一年で一番盛り上がる夏祭り。当然カップルが出来てもおかしくはない。むしろ、それを狙って祭りの前から女子に声をかける男子も少なくないのだ。


――この手紙だって、なにかの罰ゲームなのかも。


こんな地味で取り柄もない自分がモテるはずがない。

家から徒歩10分にも満たない場所にあるバス停に着くころには、すでに夏音の中では佐川から受け取った手紙の返事は決まっていた。

プシューっと自動で開く扉。お世辞にも新しいとは言えないがら空きのバスに乗ると、夏音は真ん中の席に腰かけた。


今日の運転手さん、いつもと違ったなぁ。

いつもは、『おはようございます』って挨拶してくれるのに……

ちょっとしたことでもこんなに気持ちが落ちるのって、やっぱり夏祭りが近いからかなぁ。今年もアレに袖を通すかと思うと……やっぱり怖い。
< 5 / 16 >

この作品をシェア

pagetop