夏音の風
本格的な夏が始まろうとする6月下旬。
制服のブラウスも半袖に変わる。
冷房がきいていないのか。バスの中は、いつもの朝より暑かった。
「少しくらい窓を開けてもいいかなぁ」
時速40キロ走行を保つバス。
どこまでも続く両サイドの田んぼ畑。
5センチ程の窓の隙間から入りこむ風は、夏音の髪を流すように遊んだ。
――眠い
一度欠伸(あくび)をすると、夏音の眠気は一気に加速した。
それに抵抗するように、今度は耳に響く音楽をBGMに膝の上でリズムをとる。
やっぱ、ダメ。
限界。
見慣れた景色を薄目で確認すると、夏音は安心したかのようにそのまま目を閉じた。