ベジタブル
「怖いな」
「普通ですよ」
「そうかな」
「ただ、真面目に仕事をしませんと怖いです。しかし普段は、とても優しい方です。皆が、そう思っています」
笑いながらそのように言っているが、額には汗が滲み出ていた。過去に何か恐ろしいことを体験したのだろう、目が笑っていない。また身体が小刻みに震えているのも、過去の出来事を思い出した証拠だ。
その後、彼等は無表情のまま掃除を開始した。ジークは滅多に裏の表情を見せないのだが、何かの切っ掛けでそれが表面に出た時、恐怖が訪れる。それを証明するかのように、三人は顔色が悪い。
しかし、仲が良いのは間違いない。もし互いに嫌っていたら命令をされた瞬間、反論ひとつしているだろうが、その心配は全くない。人間との良い関係に、ルイスは満足そうに微笑む。そして、この先の繁栄を願った。無論、美味しい物を食べたいという下心を含めて。
◇◆◇◆◇◆
二日後――
毒見役となったルイスは、何度も悲鳴を発していた。これも全ておかしな味付けのせいであり、相手が吸血鬼ということで三人は容赦しない。だが、尊い犠牲のお陰でメニューが増えていく。
半径五十メートルの範囲に甲高い悲鳴は周囲に響き渡り住人を驚かせるが、回数が増える度に「いつものこと」と住民が認識を改める。それにより、どのように悲鳴を上げようが救いの手が差し伸べられることはない。そして、流石吸血鬼。これくらいで、意識が昇天することはなかった。
「……ジーク」
「何?」
「どうして、弟子達も参加する。研究はお前一人でやると、聞いたはずだが……嘘だったのか!」
「いいじゃないか」
「貴様!」
その言葉に、ジークは鼻で笑う。そして、一言「言いたくなかったから」と、言葉を続けた。刹那、ルイスの顔が一気に青白く染まっていく。今のジークの態度はまさに、彼の本性そのものが前面に出ている。そして更に、弟子のレイとディランも影で口許を緩めていた。