ベジタブル
「詫びはするよ」
「何?」
「そう、この時期の名物の野菜を収穫しに行く。それを収穫した後、ルイスに食べさせるよ」
「それは?」
「別名、クリストファー」
その名前を聞いた瞬間、ルイスの表情が激しく歪むが、レイとディランは首を傾げていた。クリストファーという名前の野菜は、人間の世界に存在しない。それなら吸血鬼の世界で有名なのかと思った二人はジークにそのことを尋ねると、案の定その質問が正しいと知る。
「準備は、万端だ」
「師匠! 美味しい野菜ですか?」
「ああ、美味いジャガイモだ」
「それは、楽しみです」
和気藹々と喋っているレイとディランに、ルイスは冷ややかな視線を送っていた。ジークが話していた〈クリストファー〉という名前のジャガイモは、普通のジャガイモと認識してはいけない。
そもそもジャガイモにクリストファーという名前が付いている時点で怪しいのだが、レイとディランは疑問に持たない。ただ、クリストファーと名前が付いているジャガイモに興味を抱く。
彼等は頭の中でジャガイモ料理のレシピを考えているのか、徐々に口許が緩んでいく。二人の妄想は膨らみ、ジャガイモの収穫の日を待つ。そしてその日を迎えた四人はクリストファーという名前が付いているジャガイモが生えている場所へ向かうが、修羅場が待っているとは弟子達は知らなかった。
◇◆◇◆◇◆
「師匠、これは何ですか?」
「断ち切り鋏だ」
「どうしてこのような道具が必要なのですか」
「ジャガイモの収穫に、この道具が必要なんだ。説明は、後でする。実物を見れば、わかるから」
意味深い言葉にレイとディランは首を傾げてしまうが、疑問を口に出すことはしなかった。それは目的の場所が見えたからだ。その場所というのは吸血鬼が暮らしている村で、そもそもクリストファーは彼等が暮らしている一帯でしか収穫できない特別なジャガイモだった。