ベジタブル

「ゆ、油断できない」

「少しの傷でも怯むな!」

「勿論」

「フルコースの為だ!」

「決まっているじゃないか」

 クリストファーの数は予想以上に多いが、何とか半分まで収穫が終わった。その時のレイとディランの体力は限界に近く、叩かれている影響で手の甲や腕に青痣ができている。無論、青痣の箇所がヒリヒリと痛いが、それを気にしている暇はレイとディランにはなかった。

 その後方では、ジークとルイスがせっせとクリストファーを抜いている。その度に鼓膜を破らんほどの悲鳴が轟く。抜いては悲鳴。抜いては悲鳴――当初は耳だけではなく脳味噌まで刺激を与える悲鳴であったが、いつの間にかそれに慣れてしまい今では気にならない程度であった。

 彼等の周囲に転がっている、複数のおかしな色のクリストファー。悲鳴にも特徴があるように、表面に浮かんでいる顔も違う。どれも苦痛の表情を浮かべており、中には凶悪な表情を浮かべている物もあった。

「うっ!」

「ど、どうした」

「お腹、空いた」

 その言葉と共に、レイが肩膝を付く。これ以上は無理と判断したディランは、ジークにレイがギブアップ寸前ということを伝える。その瞬間、ジークがレイに向かって言葉を放つ。

 「フルコース二人前」と――

 刹那、レイとディランは歓喜の悲鳴を発した。

 無論、ルイスも同調する。

「ほ、本当ですか」

「嘘は、言わない」

「元気が、出てきました」

「それは、良かった」

「二人前なら、もっと収穫しないと。これだけの量だと、僕達のフルコースに足らないだろうし」

 ジークにしてみれば、料理を作るのは苦にならない。だから、二人前も三人前でも平気に作ることができる。それにフルコース二人前で彼等がやる気を取り戻し仕事が捗るというのなら、これほど楽なことはない。ジークはクリストファーを抜きつつ、頭の中でフルコースのレシピを考えていく。その為、足下に転がっていたジャガイモに気付いていなかった。
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