ベジタブル
グシャ!
ジークは自身のブーツの底で、クリストファーを踏み付けてしまう。刹那、クリストファーがか細い悲鳴を発する。その有り得ない出来事にジークとルイスは同時に間の抜けた声を発し、互いの顔を見合う。
地面から抜いたことにより完全に大人しくなったと思われていたクリストファーが、まだ生きていたのだ。それもか細い悲鳴を発し、きっちりと自己主張をする。無論、有り得ない現象だ。
まさか――
彼等はひとつの結論を導き出す。それは何かの切っ掛けで、クリストファーが進化を遂げたというもの。まさに突然変異というべきか、それとも環境がそうさせたのか――突如ルイスが大声を上げた。
「学会に、報告だ」
「学会? お前、研究者か?」
「違う違う。学会に報告すれば、礼金がたんまり貰える。金って、いくらあってもいいものだし」
「がめつい」
ジークに冷たい視線を送られようが、金が欲しいもの。その考えを包み隠さず伝えたルイスは葉や茎が切り取られたクリストファーを抜くと、ジャガイモ部分をペシペシと叩き反応を見る。
すると奇怪な表情で歪んでいた顔が、更におかしな表情へ変化していく。どうやら想像通り、抜かれた後でも生きているようだ。無論、口々に耳障りな悲鳴を発し周囲にいる者を不快にさせる。
ルイスは引き抜いたクリストファーを静かにさせようと、躊躇いなく地面に落とす。そしてクリストファーが地面に触れた瞬間「ぐえ」という生き物が踏み潰されたような声音を出し、大人しくなった。
「大事に扱え」
「ちょっと気分が悪くて」
「確かに、聞いていていい悲鳴じゃないが……いいのか? フルコースの材料が少なくなるぞ」
「そ、それは……」
「なら、大事に扱おう」
「……うん」
ルイスは弟子二人同様に、完全に「二人前のフルコース」の魔力にやられてしまっている。結果、ジークの一撃は彼の身体を深く抉り、完全に服従だった。野生のジャガイモが心底恐れているように、裏の一面が見え隠れするジークに適う相手など何処にもいかなった。