ベジタブル

「……悪魔」

「何か、言ったか?」

「言っていない」

「お前だけ、一人前だ」

「聞こえているじゃないか」

「じゃあ、言ったんだ」

「うっ!」

 完全にジークの誘導尋問に嵌ってしまったルイスは、無意識にジークとの距離を取っていく。しかしジークはルイスの腕を掴むと、強制的に自分がいる方向に引き戻す。そして彼が落としたクリストファーを拾うとそれをグリグリと額に押し付け、ネチネチといびっていく。

 同族相手に、全くといっていいほど容赦しないジーク。特に悪口は嫌いで、言った相手を徹底的に痛め付ける。それが関係してか、押し付けているジャガイモに力が入ってしまう。するとルイスの額でジャガイモが徐々に擂れていっているのか、生臭い臭いが周囲に漂う。

「ジ、ジーク」

「謝るか?」

「も、勿論」

「じゃあ、抜いていく。これ、全部」

「お前は?」

「僕は、料理の準備をしに帰る。フルコースの材料は、ジャガイモだけじゃ足りないよ。それに、下拵え」

 その言葉と同時に、ルイスの額に擦り付けていたジャガイモを取る。そしてパタパタと服に付いた泥を叩くと、前方で頑張っている弟子達に声を掛けた。フルコースの準備をしに行くと――

「わかりました」

「楽しみにしています」

「無理せず、頑張れ。何かがあった場合は、ルイスを盾にするように。ちょっとやそっとでは、壊れない」

『了解しました』

「お、おい」

 何ら疑問も持たずに了承しているレイとディランにルイスは勿論反論するが、誰も聞いてはくれない。完全に無視されてしまったルイスは崩れ落ち、シクシクと泣きはじめるが「泣きっ面に蜂」と呼ばれる状況が起こってしまう。何と、空気が読めていないクリストファーに殴られてしまったのだ。それも、吸血鬼にとっても苦手とされている脛を思いっきり。
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