ベジタブル
「き、貴様!」
踏んだり蹴ったりの状況に完全に切れてしまったルイスは、何を思ったのか素手でクリストファーの葉や茎を毟り取っていく。頭に血が上っているのでその握力は半端なく、それは一瞬の出来事。防戦一方のクリストファーは、大地から顔を出し恐怖に引き攣った表情を浮かべていた。
「流石、ルイス。これなら、安心して任しておける。弟子達が心配だったのだが、安心安心」
そのように言いつつ満面の表情で、ジークは実家へ戻っていく。そして風に乗って三人の耳に届いたのは、ジークの高笑い。まさにこの瞬間、彼の本性が表面に現れていたといっていい。
それに対し、最初に悲鳴を発したのはレイとディラン。身体を小刻みに震わしながら互いに抱き合い、師匠の本性に恐れ戦く。またジークの高笑いで冷静な一面を取り戻したルイスも、彼等に続き悲鳴を発した。
◇◆◇◆◇◆
一時間後――
壮絶な戦いに、決着が付いた。勿論、勝者はルイスとレイとディラン達であった。そしてマルガリータにやられたことに、精神はボロボロ。また、切り傷・擦り傷・打ち身・捻挫と酷い有様だった。しかし彼等の唯一の救いは、最高の食材でフルコースを食べられることだった。
「……疲れました」
「被害がこれだけで済んだのは幸いだ」
「あちらこちらが痛いです」
「それに、お腹が空きました」
「それ、俺も」
今、大きい薬箱を中心に、ルイスとレイとディランは座り、互いに手当てをし合い今回の戦いの感想を話していく。聞くも涙語るも涙というべきか――簡単に言えば、生き地獄そのもの。
同時にレイとディランは、世界にはまだ知らない物が多いということを知る。クリストファーと名付けられたジャガイモがウネウネと動き、叫び声を発する。また、此方側に危害を加えるのだから堪ったものではない。
クリストファーは、まさに物語に登場しそうな生き物といっていい。それを目の当たりにした二人は、己の勉強不足を痛感する。そして今以上に、この世界に存在する全ての野菜を知りたいと思いはじめた。また、その野菜を美味しく調理して提供するのも夢に付け加えられた。