ベジタブル
「ルイスさん」
「何だ」
「他に、奇怪な野菜はないですか?」
「マルガリータと同等か、それ以上?」
「はい」
「いやー、あれくらいインパクトが高い野菜は珍しいよ。他の野菜は、一般的に出回っているし」
「そうですか」
ルイスの言葉に、レイとディランは肩を落としてしまう。彼等にしてみれば今回の件で好奇心に火がつき、面白い野菜の探索と捕獲をしたいと思いはじめていたのだ。無論、怪我は二の次。
目の前でクリストファーについて熱く語っているレイとディランの姿に、完全にジークの影響を受けているとルイスは感じ取る。将来、実に逞しい料理人へと変貌していくだろう。そのように確信が持てるほど、二人はジークに似てきている。これで高笑いをしたら、完璧だった。
「フルコースの前に、これを食え」
その言葉と共に、ジークが姿を見せる。その手には熱々に茹でた、ジャガイモが入った籠を持っていた。これはクリストファーをそのまま茹でただけのもので、このままでも美味しい。
籠がテーブルに置かれた瞬間、次々と手が伸ばされる。そして熱々ながら、口の中に入れ味わうように噛み締めていく。その瞬間、糖分が高い果物を食べている錯覚に三人は陥った。
「う、美味い」
「美味しいです」
「頬が、落ちそうです」
「そうか、もっと食え」
「頂きます」
「残さず食べます」
一度、この味を味わってしまうと簡単に止められることはできない。三人は貪るようにジャガイモを食らっていき、次々と腹の中へと入れていく。この美味さは一種の麻薬に等しいもので、三人とも完全に味の虜になってしまう。結果、十分も掛からずに全てが消えた。
まさに、祝福の時間というべきか。三人とも、恍惚の表情を浮かべていた。茹でただけでこの表情を浮かべるのだから、クリストファーというジャガイモの潜在的な美味しさが証明された。そしてこの食材がフルコースの材料に使われる――桃源郷が、目の前に迫っていた。