ベジタブル

「師匠! フルコース待っています」

「腹の具合はどうかな?」

「まだ、一分目です」

「そ、そうか」

 結構な量を持ってきたので大丈夫と考えていたが、三人の胃袋は底無しに近い。いや、美味しいものを食べているので予想以上に消化が早いと考えるべきか。彼等の胃袋の状況を聞いたジークは、更に量を増やさないといけないと思う。今作っているフルコースも、量は多い。

 しかし、彼等の食欲を考えると――

「あと、四十分待つ」

「そ、そんなに……」

「お前達の食欲に、驚かされたんだ」

「す、すみません」

 日頃、彼等はこれほど食欲が高い方ではない。だが、美味しい物を目の前にすると変わると聞く。完全に満腹中枢は破壊されてしまい、料理を胃袋の中に納めていく。それは一種の本能に近いもので、ジークにしてみれば美味しい物を美味しいと食べてくれる方が嬉しい。

 まさに、料理人冥利に尽きる。だから、彼等に喜んで貰おうと美味しい料理を提供しようと決意する。

 そして――

 四十分後、念願のフルコースを目にした。

 普通、一品一品料理が提供されるものだが、食に飢えた三人にそれを行ったら可哀想なので全ての料理をテーブルの上に並べた。その量は半端ではなく、巨大なテーブル全体に料理が並ぶ。

「す、凄い」

「涎が」

「俺達、夢を見ているのかな」

 その言葉に続き、三人は互いの頬を抓る。確かに痛みが感じられたので、夢ではない。並んでいる料理は、紛れもなくジークが作ったフルコース。値段は五万円とされているが使用している野菜はクリストファーなので値段は倍以上に釣り上がり、本当に金持ちしか食せない。

 それが今、食すことができる。

 三人は一斉にナイフとフォークを手に取ると、次々と料理を口の中に運んでいく。完全に、上品という言葉は明後日の方向へ飛んでしまっている。通常物を切るのに使用するナイフが、フォークと同等の働きを見せ、ジャガイモのスープは一気飲みの対象となっていた。
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