ベジタブル
このように美味しい料理を奪われた場合、下手をすれば血が流れてしまう。それにルイスは、臨戦状態にあった。これでは弟子達の身が危ないと察したジークは、ひとつの言葉を発する。
「デザートがあるぞ」
「ほ、本当か!」
臨戦状態だったルイスが、瞬時に食い付いてくる。無論、弟子達も同じように食い付く。三人の瞳は眩しいほど輝き早く食べたいと無言で訴えかけ、完全にクリストファーの虜になっていた。
「喧嘩しないという約束ができるというのなら、持ってきてもいいけどね。さあ、どうする?」
「や、約束する」
「同じです」
「約束します」
何ともわかり易い態度を示す三人に、ジークは短い溜息を付いてしまう。しかし同時に、ひとつのことを思い付く。こうなると美味しい食事を目の前にちらつかせれば、服従を誓うに違いない。
そうすれば肉体労働が半減するのだが、弟子二人にそれはできない。彼等には数多くのことを教えないといけないし、様々な面で戦力になってくれるので怪我を負わすわけにはいかない。
なら――
ジークの口許が、怪しく歪んだ。新規の料理作成時のようにルイスを使えばいいのだが、ひとつだけ問題がある。それは、彼がジークのようにお日様万歳の吸血鬼じゃないということだった。それで流石に、使い物にならない。やはりルイスは、人体実験が一番無難に似合う。
(残念)
すると、無意識にどす黒い感情が外へ出てしまう。そしてジークは、三人の前で舌打ちをしていた。
「し、師匠……」
「お前、今何を考えていた」
「料理のことだ」
「いや、絶対に怪しい」
「疑うのなら、デザートを食わせないぞ」
ジークは彼等の前で仁王立ちをすると、最終警告とも取れる言葉を発する。その言葉を聞いた瞬間、三人の身体が硬直してしまう。デザートが食べられないというのは、まさに生き地獄そのもの。すると三人は何を思ったのか、互いに罪を擦り付け喧嘩を勃発させてしまう。