ベジタブル
「ルイスさんが、悪いのです」
「お、俺か!」
「そうですよ。あのようなことを言うから」
「お前達も、同じ反応を見せただろう」
「違います」
「何もしていません」
しかしレイとディランは、それは知らないと言いたいのか横を向いてしまう。そして小声で何度も「ルイスさんが悪い」と、言い続ける。美味しい料理は時として裏切りを齎すということを身を持ってそれを知ったルイスは、大声を上げていた。そして自分が悪いと言い、自棄になってしまう。
それを懸命に宥めていくジークであったが、ルイスは聞き入れてくれない。困ったジークは、食べ物で釣ることにした。無言のままで奥の部屋へ向かうと、彼の前にアイスクリームを持って来る。
「まあ、食え」
テーブルの上に置かれた、ミントが添えられた大量のアイスクリーム。更に登場したのは口直しの為のウエハース十五本で、その量はざっと四人前。これだけの量を食べたら腹を壊してしまいそうな雰囲気があったが、アイスクリームを目の前にしたルイスにその考えはない。
「いいのか?」
「ああ、お前の為に用意した」
「そうか」
「だから、機嫌を直せ」
「わかった」
「まあ、食え」
「勿論」
間髪いれずに帰ってきた言葉に、ジークはホッと胸を撫で下ろしていた。このままルイスの機嫌が悪いと、後の経営に関わってくる。そのひとつが、新しいレシピの開発であった。
タフは吸血鬼の肉体を利用しジークは更に新しい料理を開発したいと考えており、一気にメニューの変更を予定していた。無論、今のままでも人気が高いのだが、マンネリは面白味に欠け作っている側も張り合いがない。だとしたら、新規メニューに変更するのが一番いい。
現にいくつかの新メニューを組み合わせてコースを作成中で、弟子達からの評判もいい。それを何としてでも客に提供したいと思っているので、ルイスの機嫌を直すのが最優先事項だった。結果、大量のアイスクリームを奮発する。それに比例して、弟子達の量が少なくなってしまう。