もう陥落寸前
「あれはデートよ」
とその話をした紀子はそう感想を述べたが、私は机に突っ伏したくなった。
まだほかにも紀子に話していないことがあるからだ。
それは、後期授業が始まる前のこと。
掲示板を確認するためにきたら、図書室から出てきた星野のばったりとあった。それで、あれこれ話していると、彼の友人が彼を誘った。カラオケだったと思う。だが、彼はその友人の誘いを「瑞穂さんに用事があるから」といって断ったのだ。
そして私を引っ張っていき、すみませんと笑った。
用事なんてこれっぽっちもないことはわかっていた。だって特にこれといって彼と関わるようなことはなかったのだから。ただ、話すくらい。
断る理由としてのそれだったのだろうけど、そのあとちゃっかり私はごはんをおごってもらったりして。
え、餌付けではない。
そして、だ。
その何とも言えない行動に膨らんだ疑問である「どうして私にいつも話しかけてくるの?」と聞いてみた。
だって、意味がわからない。
ただ必修の授業で、隣同士だからって毎回毎回話すとは限らない。なのに、彼は話しかけてくる。その授業以外でも私を見かけると声をかけてくるのだって、謎。
そんなに親しくないはずなんだよなあ、というのが私の本音だ。
それに、まわりの目がものすごく、痛い。