もう陥落寸前
「決まっているじゃないですか」
「何が」
「俺、瑞穂さんのことが好きだからですよ」
――――などと言いやがった。
今思い出すだけで、なにこいつ、である。
そして冗談だと思っても照れる自分が本当にあれだ、免疫がないから勘弁してくれ、と思って「ふうん」といった。
返事をしないまま平気なふりをしながら、本当はかなり混乱している私に、星野は笑った。
「ってことで、覚悟してください」
「え、あ、ちょっと!」
彼はにこやかに去ったのである。
それからまあ、何もない。いや、そういわれるより前と変わらないのだが……。
このことを紀子に話すか迷っている。
もともとあの秀才君が私にちょっかいをし始めたことを面白がっているのだから、また何を言い出すかわからない。そう思うと躊躇う。
再び溜め息。
恋愛なんて、と思っていた私が、まさか。
そう思った私は、授業が終わりふらりとやってきた星野にぎょっとしてしまう。
またきたか、とも。
それは照れ隠しよね、と紀子がいうから「違うし」とすぐさま否定し、「な、なに」とやってきた星野へたずねる。