彼の手
涙でグチャグチャになりながらも、あたしの本心はちゃんと言えたと思う。
再び歩を進める彼の足を、視点の合わない目でぼんやり眺め続けていると、すぐに目の前までやって来た足。
「たぶん……ね」頭上で呆れた声がすると、突然グラッと視界が揺れる。
トンと額にぶつかる彼の胸。
後頭部はいつものように彼の優しい手が撫でている。
「散々俺のこと利用しておいてソレ?」
半分笑いながら話す彼の声が彼の胸を通して直に耳に入ってくる。
「ごめん」
優しく撫でられる彼の手が、あたしの意識を、フワフワとさせる。
「ダメ。許してあげられない」
「え………」