クローバーの起こしたキセキ





一生懸命説明する。
でも海原君は私から視線を外さない。
五分くらいその状態を保ち、先に折れたのは海原君。




「はーっ・・・・・。
分かった」




分かったと言ってくれて安心したのも束の間、海原君はベッドから降りて私の方に歩いてきた。
そして私が逃げられないように腕を掴みながら言う。




「じゃあ・・・・・俺も麻美が“辰也”って呼んでくれるまで家に帰さない、って言ったら・・・・・?」




ど、どうしたの海原君。
そう言ったつもりだったけど驚き過ぎて固まってしまい声が出なかった。
その代わりに酸欠の金魚のように口をパクパク開閉させる。




「・・・・・冗談だ。
でもいつか名前で呼ばせるから」




ふ、と薄く笑って私から手を離しベッドへ戻る海原君。
なんでだろ、海原君に腕を握られても全く嫌だと感じなかった。
むしろ心地いいって思った・・・・・。




「じゃあまた明日来るからね」




そう言って急いで私は病室を出て行った。
無性に恥ずかしくなって海原君の顔を直視出来なかったから、変なことをしてしまう前にと思って出てきたけど・・・・・。
変な風に思ってるかな・・・・・?






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