クローバーの起こしたキセキ
「いいえ、行きます。
行けなくても行きます。
病室に行けばいいんですか?」
『カウンターで待ってるわ』
そう言って切られたケータイにいくら耳を当ててもツーツーという音しか聞こえない。
私が今から行くのは海原君のところじゃない、私が行くべきところに行くんだから。
「碧海っ、私病院行ってくる!ごめんね!」
そう叫びながら部屋に飛び込み自分のカバンを引っ掴む。
碧海の方をちらっと見ると呆れたような表情をしながらも手を振ってくれた。
ありがとう、と心の中でお礼を言う。
サイフの中身を確認してからタクシーではなく快速の電車に乗る。
今までタクシーを使っていたのは、駅が遠くて少し高かったから。
だけど今なら近いしお金に構っている暇ではない。
△△駅〜とアナウンスが言ったのを聞き私は降りる準備をする。
プシューという音を出しながら開いたドアを私はぶつかるような勢いで飛び降りる。
ここから病院まで徒歩十分ほどだと思う。
私は海原君のお母さんに何を言われたわけじゃないけど海原君に何かあったんだと直感で悟っていた。