クローバーの起こしたキセキ
「もちろんです、先生。
だって私の子供です、一緒に苦しんであげなくてどうするんですか」
海原君のお母さんが気丈にもそう言う。
目には涙もなく、ただ母親として息子と一緒にいてやらねばという意思の光だけが宿っていた。
医師は頷き、周りにいた人たちに何かを伝えてお母さんを連れて行く。
私も一緒に行っていいですか?何度その言葉が喉から出かけたことか。
その度に私は自分にはその資格がないんだ、と言い聞かせた。
だから余計に驚いた。
「あ、その子も一緒にお願いします」
私が着いてきてもいいと言われた時には。
最後は二人っきりにさせてあげなくてはという想いと、海原君に会いたいという想いが葛藤していた。
そんな私の気持ちに気付いたのか、海原君のお母さんは私にそっと言う。
「辰也が最も会いたがってるのは、麻美ちゃんよ。
・・・・・お別れを言いましょう?」
私は、その言葉を聞き無意識に頷いていた。
海原君のお母さんについていく。
その先にいたのは海原君。
ベッドに横たわり、呼吸器をつけている。
まるで、本当に眠っているだけなのではないかと思うほど海原君は綺麗だった。