クローバーの起こしたキセキ
・・・着いた。
私の前に在るのは・・・海原君が居た病室の扉。
震える手を伸ばしては戻してを4回程繰り返した後決心し、ノックする。
すると中から、
「はい、どうぞ」
という声が返って来た。
数少ない、しかし独特な一度聞いたら忘れられないこの声。
今更になって、足がすくむ。
回れ右して帰りたくなったが、あの光のない瞳を思い出し、覚悟を決めた。
「母さんじゃ、ねぇの?看護師さ・・・」
覚悟は決めたはずなのに、心の何処かで期待していた。
もしかしたら、海原君にそっくりさんな全然別人だったんじゃないかって。
「・・・なんで、お前がいるんだ」
疑問符ですらなく、はっきりした拒絶の言葉。
それに、彼が発したお前・・・。
これで、確定した。
彼は、海原辰也。
この間夢星高校に転校してきた。
「海原君に、会いに来たの。
お母さんが入院して、見かけたから」
そしていいタイミングなのか悪いタイミングなのかはわからないが、そこで海原君のお母さんが入って来た。
私に気付いた彼女は、海原君への見舞い用であろう花を驚きのせいで床へボトリと落とした。
花束になっていたものが、儚く散って行く。
「ど・・・どうして、麻美ちゃんが。
どうして此処に・・・?」