私は男を見る目がないらしい。
 



理子さんと別れた後、私は散歩がてら一駅分歩くことにした。

外の空気はキンキンに冷え切っていて寒いけど、お酒で少し火照った頬を撫でる風が気持ちいい。

久しぶりに歩く道沿いにあるお店はところどころ変わっていて、どんなお店があるのか、そして街中を照らすクリスマスイルミネーションを見渡しながらてくてくと歩く。


「……」


私はふと歩く速度を落とした。

……家の近くにあるスーパー、柚丸マーケットの別店舗がそこにあったから。

朔太郎と一緒によく行ったお店……最近は行っていないお店。

外観は違うけど、その柚の形をしたロゴを見るといろいろ思い出してしまった。

どのパンを買うかとか、デザートのケーキはどれにするかとか、小さいことでケンカもした。

「肉食いたい!すき焼きすき焼き!」と無邪気な笑顔で子供のように手を握られたこともあったっけ。

小さいことを思い出すと、そこからどんどんいろんなことを思い出してしまう。

きゅーっと胸が甘く締め付けられる感覚がして、目頭がほんのり熱くなった。

……ってまた思い出しちゃってるし……。

なかなか朔太郎が私の中から出て行ってくれないけど、これが“温かい思い出”として私の中に残ればいい。

今はそう、思える。

……気がする。

曖昧な自分の心に、私は一人、くすりと笑った。

 
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