私は男を見る目がないらしい。
*
理子さんと別れた後、私は散歩がてら一駅分歩くことにした。
外の空気はキンキンに冷え切っていて寒いけど、お酒で少し火照った頬を撫でる風が気持ちいい。
久しぶりに歩く道沿いにあるお店はところどころ変わっていて、どんなお店があるのか、そして街中を照らすクリスマスイルミネーションを見渡しながらてくてくと歩く。
「……」
私はふと歩く速度を落とした。
……家の近くにあるスーパー、柚丸マーケットの別店舗がそこにあったから。
朔太郎と一緒によく行ったお店……最近は行っていないお店。
外観は違うけど、その柚の形をしたロゴを見るといろいろ思い出してしまった。
どのパンを買うかとか、デザートのケーキはどれにするかとか、小さいことでケンカもした。
「肉食いたい!すき焼きすき焼き!」と無邪気な笑顔で子供のように手を握られたこともあったっけ。
小さいことを思い出すと、そこからどんどんいろんなことを思い出してしまう。
きゅーっと胸が甘く締め付けられる感覚がして、目頭がほんのり熱くなった。
……ってまた思い出しちゃってるし……。
なかなか朔太郎が私の中から出て行ってくれないけど、これが“温かい思い出”として私の中に残ればいい。
今はそう、思える。
……気がする。
曖昧な自分の心に、私は一人、くすりと笑った。