私は男を見る目がないらしい。
 



分析室の一つに移動し、私は今回のひとつめの案件に取りかかる。

時間を計りながらサンプルを採るもので集中力がかなりいる案件だけど、ある程度まで進めば採取するサンプル間の間隔が広がるから楽になるはずだ。

余裕があれば次の案件にも入ってもいいかもしれない。

……案件は余るほどあるし。

ふぅ、と息をはいて、私は気合いを入れた。


……お昼近くになった頃、みんなはまだ他の部屋に出払っていて、みんなのデスクがある部屋には誰も居らず、その部屋に隣接した分析室に私だけが居た。

それもあって、部屋の中にはウォンウォンと唸る機械音だけが響く。

後1回、サンプルを採って特殊な容器に入れれば暫くは放置という時、部屋内にコンコン!という音が響いた。

急なノックに身体がビクッと跳ねてしまった。


「!はーい」


……と返事はしたものの、今はここを離れるわけにはいかない。

後20秒だ。

 
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