私は男を見る目がないらしい。
「……失礼します」
「あっ、今手が離せないので、えっと……後2分待ってもらえますかー!?」
「……はい」
私が叫ぶように伝えると、訪れた人は静かに返事をしてくれた。
ノックをして入ってくるということは、きっと業者の人だろう。
少し待ってもらうことはよくあることだし、大丈夫だろうと、私は慌てずにしっかりと作業をこなす。
「……よしっ」
採ったサンプルにラベルを付けて、ノートにメモして、後は1時間後。
1時間弱後にタイマーをセットしたストップウォッチを首に下げて、分析室から出る。
そこにいたのはスーツ姿の男の人。
やっぱり業者の人だな、と後ろ手で分析室のドアを閉めながら声をかける。
「すみません。お待たせしましたー」
「あ、いえ……、っ!?」
「っ!!?」
振り向いた姿に驚いて反射的に後ずさると、ゴン!と鈍い音が部屋に響いた。
たった今閉じたドアに後頭部をぶつけたのだ。
痛みを感じたけど、そんなの今はどうでも良かった。
だって、そこにいたのは……