私は男を見る目がないらしい。
 

「……失礼します」

「あっ、今手が離せないので、えっと……後2分待ってもらえますかー!?」

「……はい」


私が叫ぶように伝えると、訪れた人は静かに返事をしてくれた。

ノックをして入ってくるということは、きっと業者の人だろう。

少し待ってもらうことはよくあることだし、大丈夫だろうと、私は慌てずにしっかりと作業をこなす。


「……よしっ」


採ったサンプルにラベルを付けて、ノートにメモして、後は1時間後。

1時間弱後にタイマーをセットしたストップウォッチを首に下げて、分析室から出る。

そこにいたのはスーツ姿の男の人。

やっぱり業者の人だな、と後ろ手で分析室のドアを閉めながら声をかける。


「すみません。お待たせしましたー」

「あ、いえ……、っ!?」

「っ!!?」


振り向いた姿に驚いて反射的に後ずさると、ゴン!と鈍い音が部屋に響いた。

たった今閉じたドアに後頭部をぶつけたのだ。

痛みを感じたけど、そんなの今はどうでも良かった。

だって、そこにいたのは……

 
< 133 / 278 >

この作品をシェア

pagetop