私は男を見る目がないらしい。
 

私はキーボードのエンターキーをタン!と力をこめて押す。

数秒後、ガーッとプリンターから出てきた紙を朔太郎の目の前にバサッと差し出す。


「小西さん。これ持ってさっさと帰ってくださいっ!」

「え?もしかして、見つかったのか?」

「私をなめんなよっ!」

「わ、すげぇ。サンキュ!」

「!」


いつも通りに戻った朔太郎に浮かんだ突然の笑顔に、持っちゃいけない気持ちが私の中に溢れる。

ドキドキするなんて……嬉しいなんて感情。

ダメダメ。

笑顔になんて騙されちゃダメだ。

これで痛い目にあってるんだから。

私は心を落ち着かせ、自分の仕事に戻ろう、と立ち上がる。

すると、くいっと手を掴まれた。

はっと振り返ると、真剣な表情をした朔太郎が上目遣いで私のことを見ていて、掴んでいない方の手で手帳のメモページを開いて私の方に向けていた。


「ちょ、何す」

「じゃあ次、これよろしく」

「はっ?」

「探してる間に今出してもらったやつで問題ないか見るから」

「いや、1時間も付き合ったんだから、今日はそれだけにしてよ」

「駄目。これ明日使うから。早く」

「~~っ!」


朔太郎の都合で振り回さないでよ!と言いたかったのに、一気に仕事モードに戻ってしまった朔太郎の表情に何も言えなかった。

……こんな風に言われてしまったら断れないじゃない。

相手は朔太郎とは言え、営業部の人間に頼まれた仕事なんだから。


「わかった……」

「ありがと。助かる」


“朔太郎ってこんなに素直にお礼言う男だったっけ?”と思いながら私ははぁと息をつき、泣く泣く、見合う製品やサンプルがないかを探し始めた。

 
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