私は男を見る目がないらしい。
 

……長谷部さんに「そろそろ敬語はやめよう」と言われたのは2週間前に会った時だった。

そう言われた時は何か嬉しくてにやけてしまったけど、いざ話そうとするとちょっと照れくさくて落ち着かなかった。

……なんて言いながらも、お酒が入れば簡単に照れなんてなくなってしまって、あっという間に敬語なしで話すことに慣れてしまったけど。

そういえば、長谷部さんって仕事終わりでもいつも穏やかな笑顔で爽やかに現れるよなぁ……。


「ねぇ、長谷部さんは仕事でイライラすることってないの?」

「んーあるよ?俺ってMRだろ?相手は医者だし、結構大変。医者っていろいろいるんだよなー」

「やっぱり、だよねぇ。でも、MRって薬売り込まなきゃいけないし、イラつきを顔に出さないのが仕事ってことだよね?それ、尊敬する!」

「所詮営業マンだしね。笑顔が勝負だからさ」


長谷部さんはにっこりと私に向かって“営業スマイル”を浮かべてくる。

そのスマイルは男でも女でも見入ってしまうほどの魅力的なスマイルだ。


「へぇ、そうやって落とすわけね。綺麗な女医さんとか?あ、ナースとかも手篭めにしたりして?」

「そうそう。何人も落として来たよ?」

「ふぅん……やっぱり」


何となく面白くなくて口をむぅと尖らせたまま長谷部さん顔をじとっと見ると、長谷部さんが可笑しそうに笑った。

 
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