私は男を見る目がないらしい。
「……わかってます。本当は、彼が嘘をついてるとは思えなかったんです。正直、また楽しかった頃に戻れるかもってすごく揺れました。信じてみようかなって一瞬頭の中をよぎったし。でも、きっと私が彼のことをまだ好きだからそう思いたいだけで、もし信じたとしてもまた裏切られるんじゃないかってそっちの気持ちの方が大きくて……、信じるのがすごく怖いんです」
「……そう。気持ちはわかるけど、全てを拒否し続けるのは賛成しないわ。確かに彼は突然美桜の前から消えて傷つけたかもしれないけど、実際はちゃんと戻ってきてくれたんでしょう?そんな人まで拒絶してたら、美桜はいつになっても幸せになれないじゃない。全部を拒否するんじゃなくて、もう少し様子を見てみるとかしてもいいんじゃない?」
「それだと決心が鈍るから……さっさと諦めた方がいいんです。それに私、幸せになれない運命なんじゃないかって最近思ってて。っていうか、私にも悪いところがあるみたいだし。長谷部さんに“純粋だから騙されるんだろう”って言われちゃったんですよね。自分が純粋だとは思えませんけど、確かに人をすぐに信じるところはあると思うし。きっと騙される私がバカなのが一番ダメなんだと思います」
「……」
はぁ、と理子さんが呆れたように大きくため息をつく。
どんなに呆れられようと、これが私の出した結論だった。
この先どうなるのかなんてわからないけど、今はこうしか思えない。
自分が傷つかないためにできる、唯一の防御策。
「……美桜、“諦めた方がいい”って言うってことは、今もまだ彼のこと好きなのよね?」
「……」
「……そう」
何も答えなかったのに、理子さんは何故か納得してしまった。
どう捕らえたのかはわからないけど、千里眼で納得のできる何かを捕らえたんだろう、なんて馬鹿なことを思ってしまった。
再び沈黙が生まれてしまったのが気まずくて、いろんなものを流してしまえれば楽なのにと、私はグラスを手に取りビールをぐいっと喉に流し込んだ。