私は男を見る目がないらしい。
 



「いい恋するぞー!」


突然理子さんがそんなことを叫んだ。

……人がたくさん行き交う道のど真ん中で、だ。

私は焦って理子さんの腕を掴んだ。


「ちょ、理子さん、飲みすぎましたっ?急にテンション高」

「いーじゃん!美桜もいい恋しろよー!」

「は、はい……っていうか、理子さん、そんなんじゃ一人で帰れないでしょ!?」

「んー……、ん。帰れるー。だいじょぶ。」


へらっと笑って答えた理子さんに、“いや、大丈夫じゃないだろ!”、と心の中で冷静に私は突っ込んだ。

お店を出ようという直前に、突然理子さんのテンションが上がってしまって、いつもとは明らかに違うその様子に私は少し戸惑っていた。

こんなに乱れた(子供になった?)理子さんを見るのは初めてだ。

もしかして変なお酒でも飲んでしまったのだろうかと、理子さんが飲んでいたお酒を思い返すけど、特に何も思いつかなかった。

っていうか理子さん、お酒は弱くないのに何でこんなことになってるんだろう?

謎過ぎる……。

でもこのまま一人で返すのは心配すぎるし、やっぱりちゃんと送り届けよう……。

 
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