私は男を見る目がないらしい。
 

待って……、理子さんって朔太郎のこと好きなの?

でも、さっきは好きな人がいるなんて一言も言ってなかったのに……

朔太郎が理子さんの顔から顔を背けて、ハァとため息をつく。


「……嫌ですよ。好きな女がいるって話したでしょう?ほら、早く離れてください」

「何よー。もう。つまんない男っ」


朔太郎の言葉に渋々と理子さんが離れるけど、朔太郎の手は理子さんの身体を支えていて、その距離はすごく近い。

その光景に私の中にある感情が芽生えていく。

……朔太郎はきっと足元がふらついている理子さんを支えているだけ。

なのに、そんな理子さんに対してムカムカするなんて……私はどれだけ心が狭いんだろう。

朔太郎が他の女の人に触れることがこんなに嫌だと思ってしまうなんて。

……早く離れてほしい。


「でもさぁ、話もまともに聞いてもらえなかったって嘆いてたじゃない。そんな話も聞かない女、さっさと捨てちゃいなさいよ」

「!」

「……捨てれるわけないでしょう?その女のことが本当に好きなんですから。どんなに拒否されても、振り向いてもらえるまで俺は絶対に諦めません」

「ふぅん。愛しちゃってんだ」

「……そんなの、当たり前でしょう?高校の時にはじめて逢った時からずっと想ってきたんですから」

「……」


……どういうこと?

振り向いてもらえるまでって……好きな女って誰のことを言ってるの?

“高校の時に逢った”ってことは……幼馴染のあの子のことを言ってるわけじゃない……?

幼馴染の子は中学も一緒だったって、昔聞いたことあるし。

……まさか、また私のことだとか言わないよね?

でもそれは私を騙すためなんでしょう?

理子さんとか他の人にまで嘘を言って何のメリットになるの?

何のためにそんなことを?

 
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