私は男を見る目がないらしい。
 

「ねぇ、やだ、泣かないでよ……っ!そんなのズルイよ……っ!」

「っ、わり……、っ?」


身体が勝手に動いた。

……私は朔太郎の頭を抱き抱えるようにして、抱き締めていた。

久しぶりに感じる朔太郎の熱や匂い、感触、重さ。

全てが今までの朔太郎との記憶を私の中に蘇らせる。


「朔……っ、泣かないで」

「美桜……っ、好きだ、好きなんだ……っ」

「……っ!」

「……愛してる……っ」


掻き抱くように朔太郎が私の身体に腕を回してくる。

私の身体を掴むように動く朔太郎の手は痛いと思うのに、もっと抱き締めて欲しいという気持ちでいっぱいで。

私は負けじと朔太郎を抱き締める腕に力をこめた。

……今まではこんなに感じたことはなかったと思う。

何も言わなくても、朔太郎の私への想いが伝わってくるなんてこと。

まだ心から信じることはできないけど……今なら素直な気持ちを言いたいと思える。

 
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