私は男を見る目がないらしい。
 

少し息が上がってきた頃、唇が離れ、二人の間でお互いの吐息が混ざる。

その距離は10センチもなくて、照れくさくて朔太郎の目を見れない。

今の今まで私に触れていた唇を見つめていると、それが動いた。


「……美桜、こっち見て」

「……ん」


朔太郎の声に目線を上げると、笑顔の朔太郎が目を細めて私を見ていて、どきっと心臓が飛び跳ねた。

苦しいくらいに鼓動が速くなっていくけど、一度ぶつかった目線を外すことはできない。

私の顔の輪郭をなぞるように朔太郎の大きな温かい手が滑っていく。


「……触れて、いい?」

「……あんなキスしておいて、確かめるの遅いでしょ……」

「我慢できなかったんだよ。かわいすぎる美桜が悪い。なぁ、いい?」

「…………ダメ」

「!何で」

「私も、朔に触れたいもん」

「……えっ?」


首にしがみついて朔太郎の唇にそっと触れる。

ただ触れるだけなのに、すごくどきどきして、心臓が飛び出しそうだった。

恥ずかしすぎてもう無理だ!と、ぱっと朔太郎から離れる。


「お、終わりっ!」

「……」


何も言ってくれない朔太郎をちらっと見上げると、そこにはぽかんと口を開けて頬をピンクに染めた朔太郎がいて、私は驚いてしまった。

お互いに目が合って、二人で目を大きく見開いてしまう。

 
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