恋物語。
―――――…
―――――――…
「…今日はどうもありがとう。」
「いえいえ。それじゃあ、お気をつけて。」
慎一くんはそう言うと私に背を向けて歩き出す。
あれから食事を終えて…私は慎一くんに駅まで送ってもらった。
そして…たった今、彼とは別れて一人になったっていう感じ。
「ふぅ…」
やっぱり…慎一くんの“お誘い”を受けてよかったかも…。
男の子…?の意見を聞けて少し参考になったっていうか…。
ブーッ…ブーッ…ブー…ッ
その時、カバンに入れていた携帯のバイブ音が聞こえてきた気がして携帯を取り出してみる。
「ぇ…?」
それを確認すると電話がかかってきていて…
ピ…ッ
「……もしもし…聡さん…?」
『…お疲れさま、知沙。』
その相手は…まさかの聡さんだった―。
「お疲れ様です…っ」
『知沙さ…今どこなの?もう家?』
「え、いや…今は駅です。今から帰ります。」
『あ、そうなんだ。てか今日…南と会ってたんだよね?』
「あ、はい。そうです」
『今は?』
「もう帰りました。駅まで送ってもらったので…」
『あぁ~……そうなんだ…』
「……聡さん…?」
何だか…電話の向こうが変な気がして名前を呼んでみる。
どうしたんだろう…?
『「……知沙」』
「っ…!!!」
すると…電話口と耳に直接、響く声。それと…後ろからギュッとされる感覚―。
『「聡さん…?何で…?」』
「今、帰り。俺は、あいつと違って残業だったの。」
「そう…だったんだ…」
いつの間にか聡さんも私も携帯を使うのを止めていた。
「それより…もう帰るんでしょ?…家まで送る。」
「え…!?そ、そんな…っっ」
そんなの悪いよ…っっ
「俺が知沙と少しでも長く一緒にいたいから。…いいでしょ?」
そんなに優しい目で見つめられて、そんなことを言われたら…
「……はい…」
もう、断れなくなるじゃんか…ー。