恋物語。
「あのっ……聡さん…」
「乾杯の一杯だけ、付き合ってよ。…いいでしょ?」
「……はい…」
私が何を聞きたいのか彼には全てお見通し。
あまりお酒を飲まない私は、それが気になって仕方がなかった。
「それより…今日そんな服着てたんだね。コートで見えなかったから、さっきビックリした。」
「変…ですか…?」
“ビックリした”なんて言うから不安になる。
ちなみに私が着てきたのは…ピンクのドレスとしても着れそうなワンピース。
足元は5センチぐらいヒールのあるパンプスに、寒かったので黒タイツをはいている。
「別に変なんて言ってないでしょ?知沙に似合ってるよ。…それも。」
聡さんはそう言って私の首辺りを指さした。
「あ…。聡さんに初めて貰った物だし…今日はしてみました…」
私は少し俯き気味でそう言う。
聡さんが指さしたのは…クリスマスに彼から貰ったネックレス。
私は何だか付けるのがもったいない気がして…ずっと付けれずにいた。
あ、そだ…。
「聡さんも、そのっ…ネクタイ、付けてくれたんですね…?」
「うん。俺はこれ、愛用してるよ。それに今日は…知沙の誕生日だしね。」
「///…」
顔を上げそう聞いてみると、聡さんは柔らかな笑顔を私に向ける。
“誕生日”って分かってて自分があげた物を身に付けてくれたことが嬉しかったし…恥ずかしくもなった。
聡さんは…いつも私のことを想ってくれている…。
それは私が“好き”だと告白した時よりも…今はさらに強く感じる、気がする…。
本当に聡さんは…あの時から少しも変わらない。いつも…私をドキまぎさせる“天才”なんだから…。