恋物語。
その時―…、
「っ…!」
「…見つけた。」
頭にポンッと乗せられた手。
そして頭上から聞こえる声―…。
「あ!井上さっ…って、純也!純也も一緒だったのっ!?」
「え…」
朱里の驚きの声を聞いて私は顔を上げた。
「うん、そう。今日は井上さんと会ってた。」
「なーんだ!それなら言ってくれたらよかったのにーっ」
「ごめんって。」
頬を膨らまし怒るような仕草を見せる朱里に純也くんは謝り彼女の隣の席に座る。
「で…二人で何の話してたの?」
聡さんはそう言いながら私の隣の席に座った。
「知沙は愛されてるなーって話です。」
「ちょっ…朱里…っっ」
「まぁそうかなぁ~…でも沢松さんだって、そうでしょ?」
焦る私には構わず聡さんは朱里にそう言ってのける。
「えぇ~…?そうなのぉ~…?」
そう言われた朱里は純也くんをジロジロと見始めた。
「何でそんな顔するわけ?」
「うーそー。でも…たまには“好き”とか言って欲しいなぁー…って。」
「って、純也。言わないの?」
朱里の話を聞いた聡さんが純也くんにそう言う。
「言わない…ってことも、ないような…」
「嘘だー!結婚する前より断然、減ったじゃんっ!!」
純也くんに、ぷくーっと頬を膨らます朱里。
「純也ー…それはダメだろ。」
「じゃあ井上さんは言ってますか?」
「俺は言ってるよ。ね、知沙?」
「え、あっ…はい…」
純也くんと聡さんの会話に頷く。
本当にそう…。
ふとした何でもない時に“好きだよ”とか言ってくれる…。
だから私の方が…恥ずかしくなってしまうんだ…。
「ほらー!純也も見習って!?」
「分かったよー…」
朱里に促された純也くんは渋々返事をしていた。